胃カメラ・大腸カメラ同日検査のメリット・デメリット
『おなかとおしりの相談窓口』
西八王子やまたか消化器内視鏡クリニック(やまクリ)ブログです。
大腸カメラを受けようと思って、ネットで調べていたら、
「胃カメラと大腸カメラを同じ日にできる」という言葉を見て、
・本当に同じ日にできるの?
・体の負担は増えない?
・費用は高くならない?
・検査時間はどのくらいかかるの?
と、疑問に思った方も多いと思います。
この記事では、
・胃カメラ+大腸カメラを同日に受けるメリット・デメリット
・費用について
・検査時間の目安と検査の流れ
について説明します。
読み終わるころには、
「自分は同日検査ができるのか?」
「同じ日にまとめた方が、むしろラクかもしれない」
とイメージできるようになり、
「1日でまとめて受けてみようかな」
と思っていただけたらうれしいです。
【結論】条件が合えば「同日検査」はメリットが大きい
最初に、この記事の結論です。
- 胃カメラと大腸カメラは、同じ日にまとめて行うことができます。
- 大腸カメラの準備(下剤など)ができていれば、
- 胃カメラ自体は5分程度で終わるので、同じ日に検査ができます。
- 鎮静剤(静脈麻酔)を使う場合も、
- 「大腸カメラ用の麻酔」に少し足す
- だけで検査可能です。
- 麻酔の量が2倍になる、ということではありません。
同日にすることで、
・通院回数が減る(仕事や予定の調整がラク)
・食事制限や下剤などの準備が1回で済む
・重なっている費用(再診料・麻酔料・交通費など)がいらないので、
金銭的負担が減ります。
という大きなメリットがあります。
一方で、
・検査の日は半日がつぶれる
・鎮静を使うと当日の車・自転車の運転ができない
・持病がある方・ご高齢の方では別日に分けた方が安全な場合もある。
などのデメリット・注意点もあります。
「胃カメラ+大腸カメラ同日検査」とは?
ここでいう「同日検査」は、
胃カメラと大腸カメラを同じ日に終わらせる
ということです。
- 大腸カメラのために前日の夕食から食事を調整、
- 当日朝に下剤を飲んで腸がきれいになったら来院。
- ・まず胃カメラ(上部内視鏡)
- ・つづいて大腸カメラ(下部内視鏡)
- 麻酔がさめるまで休んで、
- 結果説明を聞いて帰宅
(精密検査を行った場合は、当日に簡単な説明をおこない、後日、最終的な結果の説明となります)
という流れです。
大きな病院では、
・胃カメラはこの曜日の午前だけ
・大腸カメラは別の曜日や午後だけ
など、病院側の都合で別日になることも多いですが、
クリニックでは、同日にまとめて行う体制をとっているところも増えています。
胃カメラと大腸カメラを1日で行うメリットについて
メリット① 時間と通院回数が減る
私は、これが最大のメリットだと考えています。
半日ずつとはいえ、検査のために2日分のスケジュールを調整するのは大変です。
特に仕事をしている方や、家事が忙しく子どもを預けたりするのが難しい方の負担がぐっと減ります。
胃カメラ・大腸カメラを別々の日にすると、
- 1日目:胃カメラ
- 2日目:大腸カメラ
と、最低2日分の休みや予定調整が必要です。
同日検査にすると、
・休みは検査当日の1日分だけ(場合によっては半日でも可)
・通院は「1往復」で済む
・忙しい方でも受けやすくなる
というメリットがあります。
メリット② 食事制限・下剤の負担が1回で済む
多くの方が「つらい」と感じるのは、検査そのものよりも
・前日からの食事制限
・当日の下剤(腸管洗浄液)
です。
胃カメラだけでも当日の絶食が必要で、
大腸カメラでは前日からの食事制限+当日の下剤が必要です。
別々の日に受けると、
「食事を気にする検査の前日」が2回
「禁食の日」も2回
になってしまいます。
同日にまとめれば、
食事制限は「大腸カメラ用」に1回
胃カメラの制限もそこにまとめられる
ので、準備のストレスを1回で済ませることができます。
メリット③ 費用面について
「同じ日にすると、費用はどうなりますか?」という質問も多いです。
費用は検査内容によって異なるので、ざっくりとした考え方だけお伝えします。
- 検査そのものの費用は、「胃カメラ+大腸カメラ」の合計で、
- 同日でも別日でも大きくは変わりません。
ただし、
- 初診料・再診料
- 鎮静剤(静脈麻酔)の費用
など、2つの検査で重なっている部分は同日にまとめたほうが節約になります。
来院回数が減ることで、交通費や駐車場代などの実費も少なくなります。
一方で、
ポリープ切除
組織検査(生検)
を行った場合は、その内容によって費用が大きく変わることがあります。
→ 具体的な金額は、保険証の負担割合・検査内容によって変わるため、
事前にクリニックへお問い合わせください。
メリット④ 1日で「胃と大腸のチェック」が完了する
40〜50代以降では、
・胃がん・大腸がんのリスクが少しずつ上がる
・健診で「便潜血陽性」「ピロリ菌陽性」と言われる方も増える
といった背景があります。
同日検査なら、
・胃の状態(ピロリ菌の有無、潰瘍、ポリープなど)
・大腸の状態(ポリープ、がん、炎症など)
を1日でまとめて確認できます。
結果が早くわかるので、不安な時間も短くなります。
デメリット
デメリット① 午後の重労働は控えたほうが無難です
検査中に麻酔を使用している場合や、生検・ポリープ切除を行った場合は、
・激しい運動
・長距離の運転
・夜遅くまでのハードワーク
はおすすめできません。
→ 「午前に検査して、午後は重い肉体労働」というスケジュールは、
安全のため、できれば避けたほうがよいです。
デメリット② 鎮静を使うと当日の運転ができない
鎮静(静脈麻酔)を使うと、
当日の車・バイク・自転車の運転はできません
ふらつきや眠気が残ることがあるため、
帰りの足(家族のお迎え・タクシー・電車など)を事前に考えておく必要があります。
同日検査だと、しっかり鎮静して「寝ている間に終わらせたい」という方が多いので、この点はとくにご注意ください。
デメリット③ すべての人に向くわけではない
以下のような方は、事前診察で慎重に判断します。
・重い心臓・肺の病気がある
・以前、麻酔・鎮静で強い副作用が出た
・ご高齢で体力がかなり落ちている
・他の病気で、点滴や酸素が必要な状態が続いている
このような場合は、
・胃カメラと大腸カメラを別日にする
・状態をみて、入院施設のある病院で検査をする
としたほうが、安全なことがあります。
検査時間と「1日の流れ」のイメージ
当院で同日検査を行う場合の一例です。
1日の流れ(例)
・前日
21:00までに夕食を終わらせる
寝る前に錠剤の下剤を飲む
・当日朝〜来院まで
自宅または院内で下剤を飲んで、腸をきれいにする
便がほぼ透明な黄色い水になったら、来院をお願いします
・来院後
問診・血圧・脈拍などのチェック
点滴をつなぎ、鎮静の準備
・検査(目安時間)
まず胃カメラ:5〜10分程度
つづいて大腸カメラ:10〜20分程度(ポリープ切除などがあると、もう少しかかることがあります)
・検査後の休憩〜結果説明
ベッドで麻酔がさめるまで休憩
その日の画像を一緒に見ながら結果説明(組織検査があれば、後日あらためて結果説明)
来院からお会計までの「院内にいる時間」は2時間前後になる方が多いイメージです(混雑や検査内容によって変わります)
どんな人に同日検査がおすすめ?
外来をしていて「同日検査がおすすめ」と感じるのは、こんな方です。
・お腹の調子が悪い(特に、みぞおち~下っ腹)
・仕事が忙しく、何度も休みにくい方
・子育て・介護などで、家をあける日を減らしたい方
・40〜50代以降で、一度しっかり胃と大腸をチェックしたい方
・健診で「便潜血陽性」「ピロリ菌陽性」と言われ、「両方の内視鏡をすすめられている方」
逆に、
「まずは大腸だけで様子を見たい」
「一度にやるのは不安なので、2回に分けたい」
という方ももちろんいらっしゃいます。
同日に検査をするのが目的ではなく、きちんと検査を受けることが一番大事です。
あなたに合った方法を、一緒に決めていきましょう。
※問診にて症状を確認して、保険適用か人間ドック(自費診療)かを判断する場合があります。
当院での「1日で終わる胃・大腸内視鏡」について
当院では、「1日で終わる胃カメラ+大腸カメラ」に対応しています。
・消化器内視鏡学会 内視鏡専門医が検査を担当
・女性医師による内視鏡検査も可能
・鎮静(静脈麻酔)を標準化し、「気づいたら終わっていた」に近づける工夫
私はもともと、大腸がんの手術を専門にしていた外科医でした。
手術を多く経験する中で、進行したがんや、広がったリンパ節を何度も見てきました。
その経験から、「胃がん・大腸がんは、早く見つければ手術をせずに済むことが多い」「手術が必要でも、早期なら体への負担・費用・時間・精神面の負担がずっと小さくできる」と強く感じています。
だからこそ、
・大腸カメラ・胃カメラをもっと身近な検査にしたい
・「怖い検査」ではなく、「安心して受けられる定期点検」にしたい
と思いながら、日々内視鏡検査をおこなっています。
まとめ
●胃カメラ+大腸カメラ同日検査のメリット
・通院回数が減り、仕事や家庭の予定を立てやすい
・食事制限・下剤などの準備が1回で済む
・重なる費用(再診料・麻酔料・交通費など)が少なくなりやすい
・胃と大腸のチェックが1日で完了し、結果も早くわかる
●デメリット・注意点
・検査日の午前中はお休みになる
・鎮静を使うと、当日の運転ができない
・持病や体力によっては、同日ではなく別日に分けた方が安全なこともある
●当院の方針
「同日検査が絶対」ではなく、一人ひとりの体調・生活に合わせてベストな方法を一緒に考えていきます
「今年こそ大腸カメラを受けたい」「せっかくだから胃も一緒に見てほしい」という方には、同日検査という選択肢をご用意しています。
【最後に】大腸カメラを「先送り」にしないでほしい
大腸がんは、ポリープのうちに見つけて取ってしまえば、防げることが多いがんです。
外科医として手術をしてきた立場から言うと、
「もう少し早く大腸カメラを受けてくれていれば…」
と思う場面に、何度も向き合ってきました。
「忙しいから」「怖いから」と大腸カメラを先送りにしている方にこそ、
「1日で胃カメラと大腸カメラを終わらせる」
という選択肢を知っていただきたいと思っています。
まずは話だけ聞いてみたい
自分が同日検査に向いているか知りたい
というご相談でもかまいません。一緒に、無理なく受けられる内視鏡の形を考えていきましょう。
記事監修(この記事の執筆者)
西八王子やまたか消化器・内視鏡クリニック 副院長:山高 謙
• 日本外科学会(外科専門医)
• 日本消化器内視鏡学会(消化器内視鏡専門医/上部・下部消化管スクリーニング認定医)
• 日本ヘリコバクター学会(H. pylori感染症認定医)
• 大腸肛門病学会

