【専門医解説】腹痛で「便意はあるのに出ない」:しぶり腹(テネスムス)の原因と受診の目安
「おなかとおしりの相談窓口」
西八王子やまたか消化器内視鏡クリニック
(やまクリ)ブログです。
「便が出そうなのに、いざ座ると出ない」
「おならやネバっとしたモノだけで、スッキリしない」
「水っぽいものだけ出るのに、便が出ない」
「残便感が気持ち悪くて何度もトイレに行ってしまう」
今回は、意外と多いけど、
「便秘かな?」
「こんなことで受診していいのかな?」
と悩まれることの多い症状、
「しぶり腹(テネスムス)」
についてお話をさせていただきます。
目次
- ①まず確認してほしい「危険なサイン」
- ②「いつまで様子見?」受診と検査の目安
- ③なぜ出ない?しぶり腹の原因
- ④やってよい自己対処/やってはいけない自己判断
- ⑤大腸カメラでわかること
- ⑥当院での受診〜検査の流れ(例)
- ⑦よくある質問(Q&A)
- ⑧まとめ:まずは診察→必要なら検査枠確保を
まず確認してほしい
「危険なサイン」
- ●強い腹痛が急に出た/時間とともに悪化している
- ●38.5℃以上の発熱、ぐったりする
●繰り返す嘔吐、水も飲めない
●お腹がパンパンに張っている+ガスも便も出ない
●血便/黒い便
●貧血っぽい(ふらつき・動悸)、体重が減ってきた
●過去に腸閉塞や大腸疾患がある
これらがある場合は、「便秘だと思うから様子見」ではなく、早めに医療機関へご相談ください。
「いつまで様子見?」
受診と検査の目安
- 0〜2日:「危険なサイン」がある/痛みが強い/ガスも出ない
→ 今日〜明日に受診
〜1週間:「危険なサイン」はないが、腹痛+残便感が続く/市販薬で悪化する
→ 早めに受診
1〜2週間:症状は軽いが続く、または繰り返す/便通の変化が「最近」
→ 診察を
1か月以上:慢性的に続く/便が細い・貧血・体重減少などがある
→ 大腸の評価を含めて相談
仕事や家庭の都合ですぐ検査が難しい場合でも、
まず外来で相談して「必要なら検査枠だけ先に確保」しておくことをおすすめします。
なぜ出ない?
しぶり腹(テネスムス)の原因
(がん・便秘・炎症)
“出したいのに便が少ししかでない”
“出し切れない感じが続く”
このような状態は
「しぶり腹(テネスムス)」
と呼ばれます。
しぶり腹の原因を重要な順に解説していきます
① 硬い便がつかえている(便塞栓・出口の便秘)
1番多いのは硬い便です。
直腸まで便が来ているのに、硬くて出しづらい・痛い・残る、というパターンです。
「出したいのに出ない」「残便感」が強く出ます。
普段から便秘で便が硬い、バリウムの検査後
などはこのタイプが起こりやすくなります。
② 大腸が狭くなり通過しにくい(がん、憩室炎など)
頻度は高くありませんが、
もっとも見逃したくない原因は、
「がん」
です。
便秘や炎症のことが多いですが、
大腸カメラで奥まで確認することが大切です。
その他、憩室炎を繰り返していると腸が細くなります。
便が細くなる、便通が急に変わる、血便、貧血、体重減少などが伴う場合は、確認が必要です。
③ 直腸が刺激されて“便意が続く”(直腸炎・感染・炎症)
直腸に炎症があると、少量の便でも強い便意が起きたり、粘液や血が混じることがあります。
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、感染性腸炎などが含まれます。
④ 腸の動きが過敏になり、便意と痛みが強く出る(過敏性腸症候群など)
ストレスや生活リズムで症状が悪化する方もいます。
ただし「危険なサイン」がある場合や、
急に症状がでた場合は、
大腸カメラなどで他の病気を鑑別することが大切です。
⑤ 出し方の問題(骨盤底筋の低下・弛緩など:排便障害)
「力むときに肛門側の筋肉がうまく緩まず、出せないタイプ」
背景はさまざまです
(高齢・産後・慢性便秘など)
バリウム検査を受けてから
腹痛のある方へ
(1か月以内、特に数日~2週間以内)
健診などで胃のバリウム検査を受けたあと、白っぽい便が出るのはよくあることです(バリウムが便に混ざるため)。
ただし、バリウムは腸内で固まりやすく、便が詰まって「便意はあるのに出ない」状態を引き起こすことがあります。
このとき、次のような症状になりやすいのが特徴です。
- ●便意があるのに、ガス・粘液・水っぽいもの(下痢のようなもの)しか出ない
●お腹が張る、お腹が痛い
●白い便は出ないが、残便感がある
この状態は、腸の出口付近に硬い便(バリウムを含む便)が栓のように詰まり、 その周囲を水分や粘液だけがすり抜けている可能性があります(いわゆる“便塞栓”の状態)。
まず外来で診察をおこない、必要であれば画像検査で原因を確認します。
やってよい自己対処
やってはいけない自己判断
自宅で試せる(比較的安全な)こと
- ●水分をしっかり(脱水は便を硬くします)
- ●温める、軽い歩行
- ●食事を控えめに(脂っこい物・刺激物を控える)
注意:次の場合は「強い便秘薬で押し出す」前に受診を
- ・激しい腹痛、嘔吐、腹部膨満+ガスが出ない
- ・血便、38.5℃以上の発熱がある
・急に便通が変わった/今までと違う症状が続く
・バリウム検査後で「便意はあるのに出ない」
閉塞が疑わしい状況で刺激性下剤を重ねるのは危険になり得ます。
「出す」より先に「原因を確かめる」ことが大切です。
大腸カメラでわかること
- ① 原因の確定:
がん・ポリープ・炎症・出血の有無を直接確認します
※必要なら組織検査やポリープ切除 - ② 早期発見・早期治療:
切除可能な場合は、その場でポリープ切除
大きいポリープやがんの場合は、連携病院へ速やかに紹介 - ③ 不安の解消:
「悪い病気だったらどうしよう」という不安がなくなります
精神的な安心につながり、以降のフォローが具体的になります
【副院長の経験から】
実際にあったエピソード
「もともと便秘がちなんですが、最近はトイレに行ってもスッキリしなくて…」
と来院された50代の患者さんがいらっしゃいました。
詳しくお話を伺うと、
「便に少し血が混じるけど、切れ痔だろう」と思って、
市販薬で様子を見ていたそうです。
念のため大腸カメラで確認すると、
直腸の炎症と、奥に大きめのポリープが見つかりました。
内視鏡で切除できましたが、
患者さんは
「まさかポリープがあったなんて…」
と驚かれていました。
「よくある便秘だろう」とせずに、
カメラで奥を確認することの大切さを改めて感じた症例です。
当院での受診〜検査の流れ
(例)
診察
- 症状の経過、便の形、血や粘液、内服薬、既往歴を確認
検査
- 必要に応じて採血、レントゲン検査、腹部超音波検査、肛門鏡検査などをおこないます。
CT検査やMRI検査が必要と判断した場合には、連携先の総合病院などへ紹介します。-
大腸カメラ
- 検査の結果、大腸カメラが必要と判断した場合には、日程を確保して精密検査を行います。
大腸の中を直接観察できるので、もっとも確実な検査です。
- 検査の結果、大腸カメラが必要と判断した場合には、日程を確保して精密検査を行います。
-
よくある質問(Q&A)
ガスもおならも出ない…これって危険ですか?
早めの受診が望ましいです。
便もガスも出ない状態は、腸の通過が悪くなっている(腸閉塞など)可能性があるため注意が必要です。
特に、お腹がパンパンに張る、吐き気・嘔吐、痛みがどんどん強くなる、ぐったりするといった症状があれば、早め(できれば当日〜翌日)に受診を検討してください。
※ガスが少しは出るが「出にくい」程度でも、痛みが強い場合は我慢せず相談を。
お腹が痛いけど、下剤で出していい?
注意して使用すれば改善が期待できます。
軽い便秘が原因で、危険なサインがなく、痛みも強くない場合は改善につながることもあります。
ただし、以下に当てはまる場合は、自己判断で刺激性下剤(腸を強く動かすタイプ)を追加する前に受診をおすすめします。
- ・強い腹痛、痛みが悪化している
- ・嘔吐、水分がとれない
- ・腹部膨満+便もガスも出ない
- ・38.5℃以上の発熱や血便がある
- ・バリウム検査後で「便意はあるのに出ない」「水便・粘液だけ」が続く
こうした状況では、無理に腸を動かすと痛みが強くなったり、状態が悪化することがあります。「出す」より先に「原因を確かめる」が安全です。
波のある腹痛(ギュルギュルする)は大丈夫?
「蠕動」という動きによるものです。
痛みが波のように強くなったり弱くなったりするのは、腸が内容物を送ろうとして収縮(蠕動)しているときに起こりやすいパターンです。
便秘、ガスの貯留、腸炎などでみられることがあります。
ただし、ガスも便も出ない、嘔吐、腹部膨満を伴う場合は通過障害(腸閉塞など)の可能性もあるため、早めに受診をご検討ください。
便が細くなった気がします。
続く場合には検査が望ましいです。
便が細くなる原因はさまざまで、便秘や腸のけいれん(過敏性腸症候群など)でも起こり得ます。
一方で、以前と比べて明らかに細い状態が続く、最近はじまった、血便、貧血、体重減少、便通の変化が重なる場合は、大腸の中を一度確認したほうが安心です。
目安として、2週間以上続く・繰り返す場合はご相談ください。
残便感が続くのは病気?
続く場合には原因を確認する必要があります。
残便感は、硬い便が残っている(出口の便秘)だけでなく、直腸の刺激(炎症・痔の痛みなど)や、排便の協調がうまくいかないタイプの排便障害でも起こります。
「何度トイレに行ってもスッキリしない」状態が続く場合は、自己判断で長く抱え込むより、原因を確認することが望ましいです。
特に血や粘液が混じる、最近はじまった、腹痛がある場合は受診をおすすめします。
痔で出血しているだけでも大腸カメラは必要?
状況によっては大腸カメラで確認すると安心です。
痔が原因の出血はよくありますが、「痔だと思っていたら大腸に別の原因(ポリープ・炎症など)が見つかる」こともあります。
次に当てはまる場合は、大腸カメラを含めて検討する価値があります。
- ・40歳以上で出血が出てきた(または増えた)
- ・出血が繰り返す/量が増える
- ・便通が変わった(便秘と下痢を繰り返す、細くなった等)
- ・貧血、体重減少がある
- ・家族に大腸がん・大腸ポリープがいる
「痔でした」で終われば安心できますし、別の原因があれば早めに対処できます。
症状が何日ぐらい続いたら受診?
大まかな目安は下記のとおりです。
- ●今日〜明日:強い腹痛、嘔吐、発熱、血便、腹部膨満+ガスも便も出ない、ぐったりする など
●数日〜1週間:「危険なサイン」はないが、腹痛+残便感が続く/市販薬で悪化する
●1〜2週間:症状が続く、または繰り返す/便通が「最近」変わった
「今までと違う」「悪化する」「繰り返す」なら、日数に関わらず早めの相談が安心です。
痛くない大腸カメラはできますか?
鎮静剤(静脈麻酔)でうとうとした状態で検査が可能です。
当院では鎮静(静脈麻酔)に対応しており、眠っているような状態で検査を受けられる方が多いです。
ただし鎮静の効き方には個人差があり、検査内容(観察のみか、組織検査や処置があるか)によっても体感は変わります。
不安が強い方は、事前診察で「鎮静の希望」「過去の麻酔経験」「持病・内服薬」を教えてください。
※鎮静を使用した場合、当日は車・バイク・自転車の運転はできません。集中力や判断力が落ちることがあるため、原則として重要な仕事(会議・判断業務)は避け、可能ならお休み(または軽作業)をおすすめします。
【まとめ】
まずは「診察」
→必要なら検査枠確保を
「便意があるのに出ない」「残便感が続く」という症状は、
体からのサインです。
ただの便秘であればそれで安心できますし、
もし原因が別にあれば早めに対処できます。
特に、最近バリウム検査を受けたあとに
「便意はあるのに出ない」
「水便や粘液だけ」
が続く場合は、 詰まり(便塞栓)が関係することがあるため、早めのご相談をおすすめします。
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記事監修(この記事の執筆者)
西八王子やまたか消化器・内視鏡クリニック 副院長:山高 謙
・日本外科学会(外科専門医)
・日本消化器内視鏡学会(消化器内視鏡専門医)
・日本消化器内視鏡学会(上部消化管内視鏡スクリーニング認定医)
・日本消化器内視鏡学会(下部消化管内視鏡スクリーニング認定医)
・日本ヘリコバクター学会(H. pylori感染症認定医)
・大腸肛門病学会
※本記事は一般的な医療情報と筆者の臨床経験にもとづく見解を含みます。体質や症状により最適な対応は異なります。心配なときは医療機関でご相談ください。急な強い症状がある場合は、救急受診も検討してください。



