胃炎(急性胃炎・慢性胃炎)とは
胃炎は、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは食生活の乱れなどをきっかけに突然起こる「急性胃炎」、もう1つはヘリコバクター・ピロリ菌への感染が主な原因となる「慢性胃炎」です。
初期段階では、炎症によって胃の粘膜がただれた状態(びらん)になりますが、さらに進行すると修復機能が低下し、胃潰瘍へと発展する恐れがあります。
胃炎の原因
胃炎の原因は、急性か慢性かによって異なります。
急性胃炎では、過食や過度の飲酒、唐辛子など刺激の強い食品の摂りすぎといった食生活の乱れが主な要因です。その他、特定の薬剤の服用や、強いストレスの蓄積も発症のきっかけとなることがあります。
一方、慢性胃炎の多くはヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)への感染が原因となります。ピロリ菌は強い酸性環境でも生き延びることができるため、胃に定着して炎症を慢性化させ、やがて胃粘膜を萎縮させるようになります。これにより、胃がんの発症リスクが10倍以上になるとするデータもあります。
感染経路としては、不衛生な井戸水などからの経口感染や、人から人への感染があり、主に5歳頃までの幼少期に感染するケースが多いとされています。日本は先進国の中でも感染者が比較的多いものの、最近では若年層を中心に減少傾向が見られます。
なお、ピロリ菌は除菌治療を受けることで除去することが可能です。
胃炎の症状
胃炎の代表的な症状には、胃もたれや胃痛、胸やけ、吐き気などが挙げられます。
ただし、これらの症状は胃がんなどの深刻な疾患とも共通しているため、自己判断で済ませず、症状が出た際には速やかに医療機関を受診し、原因を明らかにしておくことが大切です。
急性胃炎
急性胃炎では、以下のような症状が急に現れます。
- 胃の不快感
- 胃のむかつき
- 胃痛
- 心窩部痛
- 胸やけ
- 腹部膨満感
- 吐き気・嘔吐
- 吐血
- 下血 など
慢性胃炎
慢性胃炎では、以下のような症状が起こります。
なお、自覚症状が現れないまま炎症が悪化することもあります。
- 胃のもたれ
- 食欲不振
- 空腹時の胸やけ
- 食後のむかつき など
慢性胃炎は胃がんに繋がるリスクがあります
慢性胃炎を放置し続けると、胃粘膜が次第に薄くなり、萎縮性胃炎へと進行することがあります。さらに悪化すると、胃の粘膜が大腸や小腸の粘膜に似た性質へと変化する「腸上皮化生」が生じることがあります。この腸上皮化生の一部ががん化すると、胃がんを引き起こす元となります。
そのため、胃がんの前段階ともされる萎縮性胃炎の段階で異常を見つけ、早期に対応することが、胃がん予防において非常に重要です。
胃炎の検査
はじめに、問診にて症状の内容や現在飲まれているお薬、食生活の傾向などについて詳しくお聞きします。慢性胃炎が疑われる場合には、胃カメラ検査を行い、ピロリ菌の感染状況や胃粘膜の状態を詳しく確認します。
検査によって胃粘膜の萎縮が認められた場合は、胃がんへ進行するリスクもあるため、必要に応じて追加の精密検査を行い、早期発見・早期治療に繋げます。
胃炎の治療
胃炎の治療は、主に生活習慣の見直しとお薬による治療が中心となります。
さらに、検査の結果ピロリ菌への感染が認められた場合には、除菌治療を行って根本的な原因の除去を目指します。
急性胃炎の場合
急性胃炎の治療では、まず問診を通じて症状の発生時期や具体的な内容、日常の生活習慣、服用中のお薬などについて詳しくお聞きします。
その後、必要に応じて胃カメラ検査を行い、胃粘膜の状態を詳細に確認します。併せて、胃炎以外の重大な疾患が隠れていないかを見極めるため、慎重に鑑別診断を進めます。
薬物療法
お薬による治療では、胃酸分泌抑制剤や胃粘膜保護薬、胃の働きを助けるお薬などを組み合わせて使用し、症状の改善を目指します。
お薬の種類は多様であるため、症状の特徴や体調、生活背景などを踏まえたうえで、各患者様に最も適したお薬を選びます。
慢性胃炎の場合
慢性胃炎の診断では、胃カメラ検査を通じて胃粘膜の状態を詳しく確認し、ピロリ菌への感染があるかどうかを調べます。感染が確認された場合には、除菌治療が必要となります。
また、検査では胃粘膜の肥厚や萎縮の有無を直接観察し、異常が認められれば組織を採取して病理検査を行い、確定診断に繋げます。萎縮が進むと、胃壁が薄くなり血管が透けて見える状態(萎縮性胃炎)となり、さらに進行すると「腸上皮化生」と呼ばれる変化が起こり、胃がんの原因となります。
こうしたリスクを未然に防ぐためにも、慢性胃炎は早期の段階で適切な治療を受けることが大切です。原因がピロリ菌であれば除菌治療を行い、それ以外の場合にはお薬による治療や生活習慣の見直しが必要です。
ピロリ菌の除菌治療
慢性胃炎の多くは、ピロリ菌への感染が原因とされています。そのため、検査で感染が認められた場合は、除菌治療を行うことが基本となります。
ピロリ菌の有無は、主に胃カメラ検査によって調べます。除菌治療では、抗菌薬と胃酸分泌抑制剤を組み合わせて、7日間継続して服用します。治療後は約6週間以上経過してから再検査を行い、菌の消失を確認します。
万が一、初回の治療で除菌に至らなかった場合でも、お薬の種類を変えて2回目の治療を行うことができ、2回目の治療によって多くの方が除菌に成功しています。