生活習慣病とは
生活習慣病とは、その名の通り、日々の生活習慣が深く関係して発症する病気の総称です。
代表的なものには、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、脂肪肝などがあり、これらはいずれも生活環境や食事、運動習慣などと密接に関わっています。
以前は「成人病」と呼ばれていましたが、若年層の発症が増加していることや、生活習慣の影響が明らかになったことから、1997年頃より「生活習慣病」という呼び方が一般的になりました。
生活習慣病を放置すると、動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった動脈硬化性疾患に繋がる恐れがあります。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪が過剰に蓄積されることで、生活習慣病を発症しやすくなり、動脈硬化も進行しやすい状態を「メタボリックシンドローム」と呼びます。
2005年に診断基準が定められ、日本では以下の条件に該当すると診断されます。
まず、ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上あることが前提です。
そのうえで、血圧・血糖・脂質の3項目のうち、2つ以上が基準値を超えている場合に、メタボリックシンドロームと判断されます。
メタボリックシンドロームの診断基準
必須項目
- (内臓脂肪蓄積)ウエスト周囲径:男性 ≥ 85cm 女性 ≥ 90cm
- 内臓脂肪面積 男女ともに≥100cm2に相当
選択項目3項目のうち2項目以上
- 「高トリグリセリド血症 ≥ 150mg/dL」かつ/または「低HDLコレステロール血症 < 40mg/dL」
- 「収縮期(最大)血圧 ≥ 130mmHg」かつ/または「拡張期(最小)血圧 ≥ 85mmHg」
- 「空腹時高血糖 ≥ 110mg/dL」
高血圧
日本国内には、約4,300万人もの高血圧患者がいるとされています。
高血圧は脳卒中や心疾患の主なリスク因子であり、健康への影響は非常に大きいものです。
医療の進歩により、脳卒中や心筋梗塞による死亡率は大幅に下がっていますが、それでもなお脳心血管疾患は主要な死因であり、血圧の適切な管理が引き続き重要です。
一般に高血圧とは、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上、あるいは降圧薬を服用している場合を指します。
さらに、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、130〜139/80〜89mmHgの範囲にある「高値血圧」の方、さらには120/80mmHgを超える段階からも脳心血管病リスクが上昇することが示されており、早期の血圧管理が推奨されています。
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪の値が高い、または善玉(HDL)コレステロールが少ない状態です。
以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、善玉コレステロールが低いケースも含まれることから、2007年に「脂質異常症」へと診断名が変更されました。
自覚症状はほとんどありませんが、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞といった重大な疾患を引き起こす恐れがあります。
糖尿病
糖尿病は、体内でインスリンの分泌や働きが不十分になることで、血糖値が慢性的に高くなる疾患です。高血糖の状態が長引くと、血管にダメージが加わり、様々な臓器に障害を引き起こします。
初期には自覚症状がほとんどないため、気づかずに放置してしまうケースも少なくありません。しかし、血糖値の高い状態を放置すると、合併症が進行する可能性があります。
糖尿病の三大合併症には、神経障害・網膜症・腎症があり、さらに脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる疾患を引き起こすこともあります。
高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症は、血中の尿酸値が高い状態を指し、一般的に尿酸値が7.0mg/dL以上と定義されます。自覚症状がないことが多く、健康診断で初めて指摘されるケースも少なくありません。
原因には、尿酸の産生や代謝に関わる遺伝的要因に加え、食事内容、アルコール摂取、運動不足などの生活習慣が関与しています。
尿酸は腎臓で生成され、尿として排出されますが、水分摂取が少なかったり、プリン体を多く含む食品(動物の内臓や干物など)を摂りすぎたりすると、尿中の尿酸濃度が上昇し、尿酸が結晶化して尿路結石を起こしやすくなります。
さらに、尿酸が体内に蓄積し関節に結晶として沈着すると、激しい関節の痛みを引き起こす「痛風発作」が生じます。特に足の親指の付け根などが赤く腫れて突然強い痛みに襲われることが特徴です。痛みは鎮痛薬で軽快しますが、放置すると繰り返し起こるようになります。
高尿酸血症は、痛風や尿路結石を引き起こさない限り症状は現れませんが、放置すると動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。
治療には、食事や運動を中心とした生活習慣の改善に加え、必要に応じて薬物療法を行い、尿酸値をコントロールすることが大切です。
内臓脂肪が多い方は尿酸を体内で作りやすく、排出しにくい傾向があります。特に、痛風や尿路結石を経験した方、尿酸値がなかなか下がらない方は、医師と相談の上で適切な治療を受けましょう。
脂肪肝
脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に過剰に蓄積された状態を指します。
多くの場合は自覚症状がなく、健康診断などで偶然見つかることも少なくありませんが、なかには疲れやすさやお腹の違和感を訴える方もいます。
かつては、脂肪肝は大量のアルコール摂取が原因とされていましたが、近年ではアルコールをほとんど飲まない方でも発症する「非アルコール性脂肪肝」の存在が広く知られるようになってきました。