胃がんの初期症状
胃がんは、初期段階では症状がほとんど現れないことが多く、発見時には既に進行しているケースも少なくありません。
かつて日本では、胃がんが最も多いがんとされていた時期もありましたが、現在では検査や治療の方法が大きく進歩し、確立された治療体制が整っています。そのため、進行して見つかった場合でも、必ずしも手遅れとは限りません。とはいえ、がんが進行するにつれて治療への負担は大きくなり、場合によっては抗がん剤や放射線といった全身的な治療が必要になることもあります。
胃がんをできるだけ早く見つけ、負担の少ない治療で済ませるためにも、早期発見と早期治療が何より重要です。特に発症リスクが高まり始める40歳を過ぎたら、定期健診に加え、自治体が実施するがん検診や胃カメラ検査なども積極的に受けることをお勧めします。
胃がんの統計
昨今では、原因の1つとされるピロリ菌に対する検査や除菌治療の普及により、感染率が下がり、それに伴って胃がんの罹患数も徐々に減少傾向を示しています。加えて、食生活の欧米化によって大腸がんなどの罹患者が増加し、相対的に胃がんの罹患率は低下しています。
なお、2019年の統計によると、胃がんは男女合計で3番目に多いがんであり、人口10万人あたり98.5人が罹患しています。性別では、男性の罹患数が女性の約2倍となっており、男性に多い傾向があります。
また、2020年の統計では、人口10万人あたりの死亡数は34.3人と、以前に比べて大幅に減少しています。これは、胃がんに対する治療法の進歩や、胃カメラ検査の普及によって早期発見・早期治療が進んでいることが主な理由と言われています。
これらのデータからも、定期的な検査の重要性があらためて浮き彫りになっています。
胃がんの主な原因
胃がんの最大の原因とされているのが、ピロリ菌への感染です。日本人における胃がんの90%以上が、ピロリ菌に関連したものと言われています。
この他にも、過剰な塩分摂取や肥満、喫煙習慣などがリスク要因として知られています。また、血縁者に胃がんの診断歴がある場合も発症リスクが高いと言われています。 ピロリ菌については、検査で陽性と診断された場合、早期に除菌治療を受けることで胃がんのリスクを大きく減らすことが可能です。除菌後に再感染するケースは非常に稀ですが、一度感染していた人は、除菌後であっても胃がんのリスクが完全にゼロになるわけではないため、引き続き定期的な検査が重要です。
生活習慣に起因するリスク要因についても、日々の食事や禁煙といった習慣の見直しによって、ある程度予防することが可能です。特に家族歴がある方は、年齢に関わらず、早いうちから定期的に胃カメラ検査を受けましょう。
胃がんの進行度(早期胃がんと進行胃がん)
胃壁は、内側から順に「粘膜層」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜」という5層構造になっています。がん細胞が粘膜下層までに留まっている状態を「早期胃がん」と呼び、それより深く、筋層やそれ以降の層に達している場合は「進行胃がん」と分類されます。
この進行度によって、選択される治療法や予後は大きく異なります。早期胃がんの場合、内視鏡を用いた負担の少ない治療で完治を目指せるケースが多いですが、進行胃がんでは外科的な切除や抗がん剤による化学療法といった、身体への負担が大きい治療が必要になることがあります。
さらに、進行した胃がんでは、がんが周囲の臓器(腸、横隔膜、肝臓など)へ直接広がる「浸潤」や、血液・リンパの流れに乗って離れた部位に転移するリスクも高まります。
胃がんの検査
胃がんは、健康診断などで行われる胃部造影検査(いわゆるバリウム検査)によって見つかることもあります。ただし、バリウム検査では早期の小さながんを発見するのが難しいため、より精度の高い検査として、医師が直接胃の粘膜を観察可能な胃カメラ検査が有効です。
胃カメラ検査では、疑わしい部位が見つかった際にその場で組織を採取し、病理検査によってがんの有無を詳しく調べることができます。これにより、早期発見だけでなく、確定診断までを一度の検査で完結できるのが大きな利点です。
なお、バリウム検査で異常が見つかった場合は、改めて胃カメラ検査を受ける必要があるため、初めから内視鏡検査を選択することで検査の手間を減らし、より効率的に診断を進めることが可能になります。
定期的に胃カメラ検査を受けて胃がんの早期発見に努めましょう
胃がんは、早い段階で見つけて適切な治療を行うことで、予後の大きな改善が期待できる病気です。しかし、初期の胃がんはほとんど症状が現れないことが多く、自覚しないまま進行してしまうことがあります。
胃がんを確実に早期発見できる唯一の検査が、胃カメラ検査です。胃の不調を感じている方に加え、症状のない方であっても、40歳を過ぎたら年に一度は胃カメラ検査を受けましょう。特に家族に胃がんの既往がある方は、30代のうちから定期的に検査を始めると安心です。
また、これまでにピロリ菌の検査を受けたことがない方は、胃カメラ検査と併せてピロリ菌感染の有無を調べておくことも重要です。感染が確認された場合は、早期に除菌治療を行うことで胃がんのリスクを軽減できるだけでなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの予防にも繋がります。